ARTICLE / 解説
著作権
ウェブサイトやSNS等で写真が無断利用された場合、著作権侵害による損害額はどのように算定されるのか。近時の裁判例をもとに、利用許諾料相当額、利用期間、写真の性質、発信者情報開示費用等の考慮要素を整理します。
ウェブサイトやSNS、ECサイト等に写真が無断で掲載された場合、著作権者は、差止めや削除に加えて、損害賠償を請求することができる。
もっとも、写真が無断利用されたからといって、「1枚につき○万円」と一律に損害額が決まるわけではない。
写真の性質、利用目的、掲載期間、利用許諾料の実績、侵害態様などによって、裁判所が認定する金額には相当な幅がある。
写真1枚当たり数千円から数万円程度とされた裁判例がある一方、もともとの利用許諾料が高額であった写真について、複数の写真の無断利用につき数百万円の損害を認めた裁判例もある。
以下では、写真の無断利用について、どのような事情が損害額の判断に影響するのかを整理する。
写真が著作物に当たる場合、著作権者に無断で写真をコピーし、ウェブサイト等に掲載する行為は、原則として複製権及び公衆送信権の侵害となる。
損害賠償を請求するためには、著作権侵害が成立するだけでなく、侵害者に故意又は過失があることも必要となるが、インターネット上で公開されている写真であっても、自由に転載できるとは限らない。
例えば、知財高判令和8年7月8日(令和8年(ネ)第10015号等)は、インターネット上の掲示板に投稿された記事や写真を自動的に収集する仕組みを利用してウェブサイトを運営していた者について、写真が著作物であるか、権利者の許諾があるかを確認することなく転載していたことなどから、過失を認めている。
著作権侵害による損害額については、著作権法114条に特則が設けられている。
写真の無断利用で特に問題となることが多いのは、著作権法114条3項による著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額、いわゆる利用許諾料相当額である。
ただし、この金額は、単純に「通常のライセンス料」と同額になるとは限らない。
知財高判平成23年10月31日(平成23年(ネ)第10020号)は、著作権法114条3項について、損害賠償額として適正な使用料相当額をいい、過去の使用料や業界における料金相場を参考にしつつも、その実質が不法行為に基づく損害賠償であることを考慮して、その金額に拘束されることなく、具体的な事情を考慮して適正な使用料相当額を認定することができるとの考え方を示している。
したがって、実際の利用許諾料、料金表、業界相場などは重要な資料となるものの、それらがそのまま損害額になるとは限らず、写真の内容、利用目的、利用期間、利用態様、従前のライセンス実績などを踏まえて判断されることになる。
また、必要な事実の立証が極めて困難な場合には、著作権法114条の5に基づき、裁判所が口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果から相当な損害額を認定することもある。
都議選候補の写真無断転用事件(知財高判平成23年10月31日(平成23年(ネ)第10020号))は、職業写真家が撮影した都議会議員の肖像写真を、ウェブサイトからダウンロードし、ビラやウェブサイト等に無断利用した事案である。
裁判所は、写真貸出業者の料金基準等を参考としつつ、著作権法114条3項による損害額は通常の取引における料金額に当然に拘束されるものではないとした。
その上で、本件写真の性質や著作権侵害の態様等を考慮し、通常の料金額の1.5倍を使用料相当額とした原審の判断を維持している。
また、通常の取引で用いられる長期利用や複数回利用による料金の逓減についても、それは正常な取引における値引きにすぎず、著作権侵害による損害額を算定する際に当然に適用しなければならないものではないとされた。
無断利用の場合の損害額が、通常のライセンス料と常に同額になるわけではないことを示す事例といえる。
アマナイメージズ事件(東京地判平成27年4月15日(平成26年(ワ)第24391号))は、ストックフォトサービスを提供する株式会社アマナイメージズが管理する写真等が、法律事務所のウェブサイトに無断で掲載された事案である。
裁判所は、アマナイメージズが設定していた利用料金について、被告は、アマナイメージズの使用料金が著作権法114条3項のその著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を上回る旨主張していたが、アマナイメージズは、原告ウェブサイト上で、写真、イラスト、映像素材など2500万点以上のコンテンツを揃えて、利用者がこれらのコンテンツを購入、ダウンロードできる本件サービスを提供するなど、相当な市場開発努力をしているばかりか、当該市場において相当程度の信頼を勝ち取っていることが認められ、その利用料金として特に高額なものであるとは認められないとして、その料金を損害額算定の基礎とした。
その結果、原告が著作権を有する写真2点について、著作権法114条3項による損害額を各4万2000円と認定している。
写真素材として実際に流通し、具体的な利用料金が設定されている写真については、その料金体系が損害額算定の重要な資料となることを示す裁判例である。
東京地判令和5年5月18日(令和3年(ワ)第20472号)は、写真家が、販売促進用の小冊子に使用することを許諾した写真4点について、制作会社がその後、自社ウェブサイト上に制作実績として掲載した事案である。
写真4点については、もともと小冊子への掲載につき総額460万円の許諾料が認定されていたが、裁判所は、以下のとおり、この460万円をそのままウェブサイト掲載の使用料としなかった。
ウェブページにおいて広告として写真等を使用する場合、当該使用料は、使用期間が長期になるに従って1年当たりの料金が逓減し、使用期間が5年ないし10年の場合における1年当たりの使用料は、使用期間が1年の場合の3割程度の金額となるものと認められる。そして、写真を商業目的で使用する場合と、実績紹介として 非商業目的で使用する場合とでは、使用目的、使用態様その他取引の実情に 照らし、その使用料は大幅に異なるものと認めるが相当であり、その他の本件に現れた事情も斟酌すると、本件契約の使用料の1割をもって、本件ウェ ブページの掲載につき支払うべき金銭の額に相当する額というべきである。
そうすると、弁論の全趣旨によれば本件契約に係る460万円の使用料は 本件プロジェクト期間の1クール(3か月)に対するものと認めるのが相当 であるから、本件各写真の本件ウェブページの掲載につき原告が受けるべき金額は、1年当たりの商業目的の使用料1840万円(460万円×4)に、 掲載期間7.5年(平成19年3月から平成26年8月まで)を乗じ、更に 長期逓減率である3割を乗じた上で、実績紹介としての非商業的目的である ことを考慮してその1割を乗じた金額とするのが相当である。
その結果、7年6か月にわたる掲載について、著作権法114条3項による損害額を414万円と認定した。
この判断は、同じ写真であっても、利用媒体や利用目的が異なれば、従前のライセンス料をそのまま適用するのではなく、その利用態様に応じた調整がされ得ることを示している。
なお、知財高判令和7年5月14日(令和5年(ネ)第10067号)も、この414万円の損害額を維持している。
アフィリエイトサイト無断掲載事件(大阪地判令和8年3月17日(令和7年(ワ)第10048号))は、写真家が撮影した人物写真2枚が無断利用された事案である。
裁判所は、写真の内容、原告が写真家であること、投稿がアフィリエイト収入を目的としていたこと、利用期間が1か月程度又は3か月未満であったことなどを考慮し、著作権法114条3項による損害額を写真1枚当たり4万円、合計8万円と認定した。
また、著作者人格権侵害について合計18万円の慰謝料を認め、弁護士費用2万円を加えた合計28万円の損害を認定している。
同判決は、著作権者自身がウェブサイト上に掲示している利用料金や、他事件における示談金額が、そのまま著作権法114条3項の損害額になるものではないことも指摘している。
釣り具写真掲載事件(東京地判令和6年11月14日(令和5年(ワ)第70611号))は、釣り具の商品写真がオークションサイトで無断利用された事案である。
掲載期間自体は約2時間と短かったものの、原告が無断転載を指摘したことを受けて出品が取り消されたこと、原告が正規の取引先には商品写真の利用を許諾していた一方、転売目的の販売者には利用を許諾していなかったことなどが考慮された。
裁判所は、著作権法114条3項による損害額を写真1枚当たり1万5000円と認定している。
この事案では、利用期間が極めて短いという事情だけで損害額がごく少額とされたわけではない点も参考になる。
東京地判令和2年10月23日(令和2年(ワ)第1667号)は、職業カメラマンが結婚式で撮影した写真が無断利用された事案である。
裁判所は、協同組合日本写真家ユニオンの使用料規程を参酌するとともに、原告が結婚式の撮影を業とするカメラマンであり、各写真が業務として撮影されたものであることなどを考慮した。
その結果、著作権法114条3項による損害額として、写真1枚当たり4万円を認めている。
写真家や写真販売事業者など、写真そのものを業務として利用している場合には、実際の利用許諾料や業界の料金体系が重要な資料となることがある。
音楽雑貨写真事件(東京地判令和元年9月18日(平成30年(ワ)第14843号))は、商品の販売を目的として撮影された写真が、競合するウェブサイトで無断利用された事案である。
裁判所は、掲載期間が長いものでは1年6か月に及んだことなどを考慮する一方、問題となった写真は画像素材として販売することを目的として撮影されたものではなかったことから、画像素材販売会社の価格表を損害額算定の際に大きく考慮することは相当ではないとした。
その結果、著作権法114条3項による損害額を写真1枚当たり5000円と認定している。
以上の裁判例からも、写真の無断利用について、一律の相場が存在するわけではないことが分かる。
特に重要なのは、写真に通常いくらの値段が付いているかだけで損害額が決まるわけではないという点である。
損害額を検討する際には、
写真について実際の利用許諾実績があるか
ストックフォト等として客観的な料金体系が存在するか
写真が職業写真家によるものか、商品販売等に付随して撮影されたものか
無断利用が営利目的で行われたか
広告、商品販売、制作実績の紹介など、どのような目的で利用されたか
ウェブサイト、SNS、印刷物など、どの媒体で利用されたか
掲載期間、掲載サイズその他の利用態様がどの程度であったか
通常の取引で適用される値引きや長期利用による逓減を、無断利用の場合にも考慮することが相当か
といった事情が問題となる。
例えば、アマナイメージズ事件(東京地判平成27年4月15日(平成26年(ワ)第24391号))のように、写真素材として実際の料金体系が存在する場合には、それが重要な基準となり得る。
他方、都議会議員の肖像写真の事案(知財高判平成23年10月31日(平成23年(ネ)第10020号))では、通常料金そのものではなく、その1.5倍が損害額とされた。また、東京地判令和5年5月18日(令和3年(ワ)第20472号)では、従前の許諾料が460万円と高額であっても、後のウェブサイト掲載が実績紹介目的であったことなどから、その利用態様に応じた大幅な調整が行われている。
このように、著作権法114条3項の損害額は、通常の取引で設定されている料金を出発点としつつ、実際の侵害行為に即して認定されるものと考えるのが適切である。
また、権利者が独自に設定した利用料金が存在していても、それだけでその金額が裁判上の損害額になるとは限らない。実際の取引実績や写真の性質、利用態様等との関係で、その料金にどの程度の合理性があるかが問題となる。
匿名のウェブサイトやSNSアカウントによる無断利用の場合には、損害賠償請求を行う前提として、発信者情報開示手続が必要になる場合がある。
そのため、写真そのものの利用許諾料相当額より、権利者が負担する調査費用や弁護士費用の方が大きくなることも珍しくない。
もっとも、発信者情報開示のため実際に支出した費用が、そのまま全額、侵害者に対する損害として認められるわけではない。
例えば、知財高判令和8年7月8日(令和8年(ネ)第10015号等)は、権利者が発信者情報開示手続に27万5000円を支出していた事案について、そのうち10万円を著作権侵害と相当因果関係のある損害と認めている。
東京地判令和6年11月14日(令和5年(ワ)第70611号)も、発信者情報開示手続について支出された弁護士費用の一部を損害として認めている。
写真の無断利用に対する損害賠償を検討する場合には、写真自体の損害額だけでなく、侵害者の特定に必要となる手続や費用も含めて検討する必要がある。
写真の無断利用による損害額は、「写真1枚につき○万円」という形で一律に決まるものではない。
実際の利用許諾料や業界の料金体系は重要な資料となるが、それだけで金額が決まるわけでもない。写真の性質、利用目的、媒体、掲載期間、利用態様、従前の取引実績などを踏まえて、個別の事案ごとに判断される。
また、侵害を発見した場合には、削除を求めるだけでなく、掲載状況、URL、掲載期間その他の証拠を保存した上で、権利者や侵害者の特定、損害額の算定方法を検討することが重要となる。
近時の知財高裁判決と写真の無断転載に関する裁判例については、以下のCASE NOTEでも紹介している。
インターネット上の写真を転載したウェブサイト運営者の過失及び損害額 →
著作権侵害に関する警告、交渉、差止め・損害賠償請求については、著作権・著作権侵害に関する取扱業務をご覧ください。
©️ 2026 KOSUKE SUGAWARA