CASE NOTE / 裁判例

インターネット上の写真を転載したウェブサイト運営者の過失及び損害額

2026.07.08

知的財産高等裁判所

令和8年(ネ)第10015号等

インターネット上の写真を無断転載したウェブサイト運営者の過失を認め、写真の閲覧数等の立証が困難であるとして、著作権法114条の5により損害額を認定した知財高裁判決を紹介します。

1 著作権侵害に基づく損害賠償請求

著作権者に無断で写真を複製し、ウェブサイト上に掲載する行為は、原則として、写真に係る複製権及び公衆送信権の侵害となる。
著作権侵害に基づく損害賠償請求は、民法709条に基づく不法行為責任であるため、差止請求の場合と異なり、侵害者の故意又は過失が必要となる。

また、著作権侵害による損害額の立証には困難を伴うため、著作権法114条は、侵害品の数量、侵害者の利益及び利用料相当額に基づく損害額の算定・推定規定を設けている。これらの規定によっても損害額の立証が極めて困難な場合には、同法114条の5により、裁判所が口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいて相当な損害額を認定することができる。

(相当な損害額の認定)第百十四条の五 著作権、出版権又は著作隣接権の侵害に係る訴訟において、損害が生じたことが認められる場合において、損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。

2 本件の概要

本件は、著作権者である一審原告(被控訴人)が、ウェブサイト「ロジカル速報」の運営者である一審被告(控訴人)に対し、原告が著作権を有する3枚の写真を無断で転載されたとして、複製権及び公衆送信権の侵害に基づく損害賠償を請求した事案である(知財高判令和8年7月8日(令和8(ネ)10015号等)。

一審原告は、著作権侵害による損害として197万5100円、発信者情報開示命令の申立てに要した弁護士費用等として27万5000円、合計225万0100円を請求した。
原審は、一審被告による著作権侵害及び過失を認めた上で、著作権侵害による損害5万円、発信者情報開示手続に関する弁護士費用等10万円の合計15万円を認容した。
一審被告は敗訴部分を不服として控訴し、一審原告も、発信者情報開示手続に要した27万5000円全額を損害として認めるべきであるとして附帯控訴した。

3 被告の主張

一審被告(控訴人)は、主として次のように主張した。

第一に、本件各写真は、第三者により画像共有サイトにアップロードされ、一般公開されていたものであり、権利者の表示や有料画像である旨の表示も付されていなかった。そのため、他人の著作権を侵害することを予見することはできなかった。
第二に、一審原告(被控訴人)から問い合わせを受けた後、速やかに写真を非公開とする措置を講じ侵害の拡大防止に努めており、この事情は過失の程度又は損害額の判断に当たって考慮されるべきである。
第三に、Google Analyticsのアクセス解析資料によれば、各写真の閲覧数は27回にすぎず、閲覧1回当たりの対価を100円であったとしても、損害額は2700円にとどまると主張した。

4 知財高裁の判断

知財高裁は、一審被告(控訴人)が、インターネット上の掲示板に投稿された記事を自動的に収集し投稿するプログラム(スクリプト)によって、収集した記事や写真が著作物に該当するか、著作物である場合に権利者の許諾を受けたものであるかを確認することなく、漫然と写真を転載していたことから、画像共有サイトに権利者表示等がなかったという主張を考慮しても、被告には過失が認められるとした。
また、侵害発覚後に写真を非公開にしたとしても、そのことによって、既に行われた著作権侵害についての過失の程度が軽減されるものではないとした。

損害額については、Google Analyticsによるアクセス解析は、証拠上、閲覧者又はユーザーの設定によって解析結果が異なることが認められることから、27回という閲覧数を直ちに採用することはできないとした。

その上で、本件期間中の各写真の閲覧数を立証することは、その性質上極めて困難であり、写真の内容、通常の閲覧対価、写真が公開された期間等を総合考慮して、著作権法114条の5により損害額を5万円と認定した原審の判断を維持した。

さらに、一審原告(被控訴人)が発信者情報開示手続に支出した27万5000円については、手続の性質・内容、本件で認容された損害額等を考慮し、そのうち10万円だけが一審被告(控訴人)の不法行為と相当因果関係のある損害であるとした。

5 補論:写真の無断転載など著作権侵害の損害賠償額

(1)大阪地判令和8年3月17日(令7(ワ)10048号)(人物写真)

【考慮要素】
・各写真の内容、原告が写真家であること、本件各投稿がいわゆるアフィリエイト収入目的でなされたこと
・本件各写真の利用は写真1が1か月程度、本件写真2も3か月に満たない短期間であり、閲覧に供された期間も少ない
【損害額】
本件各写真の利用許諾料相当の損害額(著作権法114条3項)は1枚4万円で、その2枚分の合計8万円であると認めるのが相当
・みなし侵害も含めた著作者人格権侵害に対する慰謝料は、本件各写真の内容や原告が写真家であることに加え、本件各投稿の侵害態様などを考慮し、本件写真1に係る本件投稿1については10万円本件写真2に係る本件投稿2については8万円、合計18万円であると認めるのが相当であるところ、これら合計26万円の賠償を求めるために必要かつ相当な弁護士費用は2万円(本件各投稿に係る侵害につき各1万円)であると認められ、以上の損害額合計は28万円となる。
【その他】
・著作権法114条3項に基づき著作権侵害に係る損害額を算定するに際しては、通常の利用許諾料相当額をもって損害額とすることはいわゆる侵害し得の事態を招くなどの問題意識を踏まえた法改正で同項の「通常受けるべき金銭の額」から「通常」の文言が削除されたことや、その後のさらなる改正で規定された同条5項掲記の考慮が求められるものというべきところ、被告らの主張は、これら法改正の内容、趣旨に反し、通常の利用許諾料相当額をもって損害額を算定すべきとするに等しく、その掲げる金額の当否にかかわらず、一般論として採用できるところではない。
・原告は、自らの算定を根拠づけるものとして、自らのウェブサイトに掲げる画像使用料の金額を指摘するが、実際の取引事例などをもって利用許諾料の相場等を示すものではなく、上記算定を左右するものではない。また、原告は、同種他事案において高額の解決金が定められた示談例も証拠提出する(甲10、13)が、示談における解決金額は、経緯も含めた個別具体的な事情によって定まるもので、この種事案では、被疑侵害者において、訴訟回避という別の考慮要素も加わることが少なくないと考えられるところ、著作権法114条3項による損害算定に当たって、当然に参酌できるものではなく、やはり当裁判所の上記算定を左右するものではない。

(2)東京地判令和6年11月14日(令5(ワ)70611号)(釣り具写真)

【考慮要素】
・令和4年8月31日午後10時11分頃に本件投稿をした後、翌日である同年9月1日午前0時19分頃に上記の出品を取り消したこと
・被告が本件各写真(原告の販売する釣り具の写真)を利用した期間は、上記のとおり2時間強にとどまるが、これは、原告が、本件投稿の約1時間後に、本件オークションサイトの出品者への質問を投稿する機能を利用して、出品者に対し、テキスト及び画像の無断転載を確認したため原告の規定に従った利用料金を請求する旨の予告をしたという事情を受けて行われたものであること
・本件各写真は、原告の取り扱う本件商品の広告販売を目的として撮影されたものであるところ、証拠(甲1)によれば、原告は、原告の取扱商品を卸している販売店等の正規の取引先に対して商品写真の利用を許諾することはあるものの、原告の取扱商品を高額で転売するような正規の取引先でない販売者に対して商品写真の利用を許諾した実例はないこと
・原告においては、被告のような正規の取引先でない販売者との間で本件各写真の利用許諾契約を締結することは想定されていないとみられること
【損害額】
・「著作権…の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」(著作権法114条3項)は著作権侵害をした者との関係で事後的に定められるものであることその他本件に顕れた一切の事情を総合的に考慮すると、本件において原告が受けるべき金銭の額に相当する額は、本件各写真1点当たり1万5000円、合計13万5000円とするのが相当である。
・原告は、本件開示手続を原告代理人らに委任し、その弁護士費用として着手金38万5000円及び報酬金11万円(いずれも消費税込)を支出したことが認められる。発信者情報開示手続の性質、内容等を考慮すると、このうち20万円をもって、被告の不法行為と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。
・本件事案の内容、本件訴えに至る経過、認容額等に照らすと、本件訴えに係る弁護士費用については、被告の不法行為と相当因果関係のある損害として3万3000円と認めるのが相当である。
【その他】
・本件各写真は、原告代表者が原告ウェブサイト等で本件商品を広告販売するために撮影したものであること、本件各写真の撮影は、本件商品を様々な角度から接写しつつ美しい画像とするために、被写体の配置、背景、光源、カメラアングル等を調整して行われたものであることが認められる。そうすると、本件各写真は、いずれも、撮影者の個性が表れたものといえ、「思想又は感情を創作的に表現したもの」と認められる。すなわち、本件各写真は、「著作物」(著作権法2条1項1号)に該当する。

(3)東京地判令和2年10月23日(令2(ワ)1667号)(結婚式写真)

【考慮要素】
・協同組合日本写真家ユニオン作成の使用料規程である本件規程は、同組合が管理の委託を受けた写真の著作物の利用にかかわる使用料を定めるものであり、一般利用目的(宣伝広告を目的とせず、記事と共に、事柄を説明するために写真の著作物を利用する場合)でウェブページの最初のページ以降のページに写真を掲載する使用料は、12か月以内で2万5000円、1年を超える場合の次年度以降の使用料は1年当たり1万円とされている
・原告は結婚式における写真撮影を業とするカメラマンであり、本件各写真は、原告が、依頼を受けて結婚式場において撮影したものであり、カメラマンである原告が業務により作成したものといえる。そうすると、原告が本件各写真の著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額(著作権法114条3項)の算定に当たっては、本件規程の内容を参酌するのが相当である。
【損害額】
・原告が本件各写真の公衆送信につき受けるべき金銭の額(著作権法114条3項)は、本件各写真1枚当たり4万円と認めるのが相当である。
・被告による氏名表示権侵害の態様やその他本件に現れた一切の事情を考慮すれば、氏名表示権侵害によって原告に生じた慰謝料としては4万円と認めるのが相当である。
・本件事案の性質・内容、本件訴訟に至る経過、本件審理の経過等諸般の事情に鑑みれば、被告の著作権侵害行為及び著作者人格権侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用相当額の損害は、2万円と認めるのが相当である。

(4)東京地判令和元年9月18日(平30(ワ)14843号)(商品写真)

【考慮要素】
・被告は、原告が本件各写真を原告ウェブサイトに掲載することによって販売していた本件各商品を、本件各写真と実質的に同一の被告各写真を被告ウェブサイトに掲載することによって販売していたこと
・被告各写真の掲載期間は長いもので1年6か月にわたること
・画像素材の販売業者である「ペイレスイメージズ」のウェブサイトでは、画像素材の単品での購入価格が432円から5400円までとされていると認められること
・原告は、アマナイメージズの価格表において、画像素材1点当たりの使用期間1年までの使用単価は3万8880円、使用期間3年までの使用単価は6万0480円、無断使用した場合には使用料金の200%を請求できるとされていることを主張するが、弁論の全趣旨によれば、アマナイメージズは、画像素材のレンタルや販売を業とする株式会社であると認められるのに対し、本件各写真はレンタルや販売を目的として撮影されたものではないから、原告が主張する価格表について本件各写真の複製及び公衆送信に係る著作権法114条3項所定の損害額の算定に当たって大きく考慮することは相当とはいえない。
【損害額】
・本件各写真の複製及び公衆送信につき受けるべき金銭の額(著作権法114条3項)は、写真1枚当たり5000円と認めるのが相当
【その他】
・本件各写真は,本件各商品を販売するために撮影されたものであると認められるところ(甲33)、以下のとおり、いずれも、商品の特性に応じて、被写体の配置、構図・カメラアングルの設定、被写体と光線との関係、陰影の付け方、背景等の写真の表現上の諸要素につき相応の工夫がされており、撮影者の思想又は感情が創作的に表現されているということができる。

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